昔々、南天(南インド)の鉄塔に、秘密の法門(教え)が蔵されていました。
龍猛(りゅうみょう)菩薩は、その教えを受けたくて鉄塔へ行きますが、中に入れません。
でも、心を至して懺悔をしたら、塔が開いて中に入ることができました。
そして、金剛薩埵から『金剛頂経』や『大日経』を伝授されたという話が、
『金剛頂経義訣』にあります。
この鉄塔、実在したという立場と、
龍猛さんの内心にあるもの、
という考えかたがあります。
覚鑁さんの『鉄塔事』には、
「鉄塔とは我が此の肉身を指すなり。
然る故はこの身すなはち万法含持の故に、
一切の功徳をそなえて欠けるところなし」
とあります。
甚深秘密の教えは我が身中の塔にあり、
懺悔すれば、その扉が開いて、教えが現れる、
と考えても良いでしょう。
また、
塔に金銀銅鉄の四種があり、四種法身に配す
とあります。
四種法身は、四種の瞑想上の仏(真如)
金塔は、ありのままの仏、大日如来のこと。
銀塔は、楽しむための仏、阿弥陀さんとか、阿閦とか薬師とか。
銅塔は、お釈迦さんのように、この世に実際に現れた仏。
鉄塔は、すべての存在に伴っている仏、あなたとか僕とか。
いずれにしても、
懺悔反省して、心の窓を開ければ、
仏の説法が風のように入ってくる、
全ては法身(真如)だから、
と考えています。