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薬師如来の真言を考える

仏教と密教

お薬師さんの真言にもいくつか種類があります。
市販のお経本などに載っているポピュラーなものは、
小呪という、
oṃ huru huru caṇḍāli mātangi svāhā
オーン フル フル チャンダーリ マータンギ スヴァーハー
(おん ころころ せんだり まとうぎ そわか)

この真言の意味は、
・oṃ
法身、報身、応身の三身(悟りの当体)

・huru huru
huruを間投詞とみれば「畏るべし」
hara の俗語体とみれば「除く、追い払う」
haraは破滅者、シヴァのこと。

・caṇḍāli
チャンダーリーよ(暴悪相者よ)
・mātangi
マータンギー(象王の如く)

チャンダーリーとマータンギーは、
身分差別の最下層にある不可触賤民の女性名。
これは、
もともとアーリア人以外の未開種族が信仰した農業豊饒女神のことで、
汚穢の種族を摂受して、仏法領の守護者としたものであろう、
と坂内師『真言陀羅尼』にあります。

チャンダーリーは旃陀羅、マータンガーは摩登伽、
と経典などに登場します。

お釈迦さまが過去世に旃陀羅だったのは、
ジャータカなどにでてきます。
それは、仏教が徹底的な平等主義で、
身分差別を認めていないからでしょう。

で、意味としては、
「薬師如来に帰命したてまつる、
 除きたまえ、除きたまえ、
 チャンダーリーよ、マータンギーよ」

『真言宗在家勤行講義』は、
センダリは、
暴悪の相に住して、よく一切の悪魔悪病を除去する能力のあるものの義
マトウギは、
象王という百獣の中の王で、
すべてのものを良く降伏する力ある故に、
今よく薬師仏が一切の悪魔を降伏するのに譬えた。

『梵字必携』では、
おーん 取り去りたまえ、取り去りたまえ、
チャンダーリーよ、マータンギーよ(我を守護しため)

栂尾先生の『常用諸真言義釈』では、
オン 速疾に 速疾に センダリ(暴悪の相をなせるものよ)
マトゥギ(象王よ、即ち狂象の如き降伏の相に住するものよ)
ソワカ

『中院流の研究』では、
オン 速く疾く、暴悪相者よ、象王の如く ソワカ

とあります。

薬師真言を唱える時は、
本尊と行者の四大(地・水・火・風:肉体)
がよく一致して、一体不二となる、
と観想します。
それによって疾病を除き、身心安楽になる。

そして、
浄瑠璃世界で濁世の衆生を救おうとしている薬師は、
光明映徹して円満なお顔でいらっしゃいます。

ですから、
暴悪相者よ、象王の如く
というのは尊格に似合わない。
仏典では、
圧迫され差別されてきた種族の地位向上と救済が説かれます。
なので、
全ての平等、それがすべてを救済する方法、
ということがこの真言の義ではないか、
とも考えています。

治病に関しては、
『十住心論』や『三昧耶戒序』に、
身病の原因を治すのは医薬、食事 生活の改善工夫
心病(迷い煩悩思い通りにならない苦)を治すのは、
仏教の教え(三摩地の修行)
と書かれています。

心病の原因は無明(根源的な迷い)
それは、
無いものを有る、と思ったり、
事実と事実でないものを混同する、
ということ。

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  1. ツボイ より:

    真言の意味を考察していくと時代や意訳が見えて来るんですね。
    そこに居た人が見えてくるようで、面白いですね。

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