真言密教の戒の本体、
修行の原動力となるものが三昧耶戒。
『三昧耶戒序』には、
「今、授けるところの三昧耶仏戒とは、
ありのままの真実体である大日如来によって説かれた、
真言密教の戒である。
もし善男子・善女人、
比丘・比丘尼など、
清らかな信仰ある男女で、
真言の教えに入門して修行しようと欲するならば、
先ず四種の心を起こさなければならない。
一つには信心。二つには大悲心。三つには勝義心。四つには大菩提心」
と説かれています。
1,信心。
混じりけの無い澄んだ心。
何を信じるかといえば、
修行の目的(成仏、人格の完成、悟り)と
修行方法。
『御遺誡』に、
「我心、仏心、衆生心の三差別なし。
この心に住すればすなわちこれ仏道を修す」
とあります。
2,大悲心。なさけ、慈悲。
3,勝義心。みちをもとめる向上心。
4,大菩提心。三摩地心、精神統一の瞑想。
日輪月輪の光明を観じ、
真言と印と観想によって、
智慧の働きが十分に体験できれば、
光明に満たされ、迷いの闇は無くなり、
毒薬も薬となる。
そして、
「諸仏如来、この大悲勝義三摩地をもって戒となし
時としてしばらくも忘るることなし」
と書かれています。
大悲心は、
一切衆生を自分自身、もしくは大切な人と思うこと。
そうすれば、
他の命を害し、財を奪い、妄語し綺語し、悪口両舌することはない。
つまり、
一切の悪が消え、心は清涼になるから、
大悲心は戒。
勝義心は最高の智慧、秘密荘厳心。
自心の源底を覚知し、
ありのままに自身の数量を証悟する。
そこに住すると、
内外一切の悪を調伏し、
善を増長し、心が清涼になるから、
勝義心は戒。
大菩提心は最勝の智慧を直観し、
智慧のものになること。
仕切り差別のない、大きな一心(宇宙心、全体心)を体験する。
全てに自性が無いことを観じるから、
一切の悪を離れ、一切の善を修す。
だから、大菩提心は戒。