太宰の『お伽草紙・浦島さん』に、
竜宮城の様子が描かれています。
ご馳走は用意されている。
歌舞音曲も客をもてなすためではなく、流れている。
乙姫さまは、
誰に聞かせようという心も無く琴をひく。
その音を聴かなくてもよい。
客の讃辞をあてにしない。
客も感服したような顔つきをする必要が無い。
寝ころんで知らん振りしていてもよい。
主人は客のことを忘れているけれど、
客は自由に振舞つてよい、
という許可は与えられている。
食べたければ食べる、
食べたくなければ食べない。
ああ、
客を接待するには、このようでありたい。
ろくでも無い料理をうるさくすすめて、
くだらないお世辞を交換し、
おかしくもないのに笑い、
嘘ばかりの社交を行い、
そんな小利口の大馬鹿野郎どもに、
この竜宮の鷹揚なもてなし振りを見せてやりたい。
と。
以前、
あるかたを講師としてお招きし、
宿を手配し、
夕飯はどうしますか、
と聞いたら、
調べ物や予習復習などもありますので、
ひとりにしてください
それが私にとって最高のもてなしです、
といわれました。
僕も最近、そう思っています。
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